こんにちは!makeshopマガジン編集部です。

6/8に開催した「makeshop day」について、昨日公開した前編に続き、後編のレポートをお届けいたします。

第4部 年商20億、九州No.1の売上「道の駅むなかた」様に聞く、オリジナルヒット商品を生み出す極意

第4部はトークセッションです。ご登壇いただいたのは、道の駅むなかた 商品開発部部長の工藤達哉様です。モデレーターは、GMOメイクショップ株式会社 エバンジェリストの高橋和夫が担当しました。

道の駅むなかたは、朝から行列ができて飛ぶように商品が売れていくほどで、2011年から連続で九州No.1の売上実績を誇ります。近くに4つの漁港があるという好条件から、多種多様かつ旬な魚が買えるとして人気を博しています。

その道の駅むなかたにおいて、商品開発と販売戦略を担っていた工藤様。とくにECサイト用の新たな商品の開発に注力しました。それも1つや2つではなく、種類は多い方がいいとの方針で開発を進めたところ、なんと現在では70種類の商品ラインナップとなっています。今回はその中から、3つの商品をご紹介いただきました。

1つ目は「わかめ入りそうめん蒟蒻」。年間で10万食を超えるヒット商品です。ほかにはない蒟蒻(こんにゃく)とわかめの組み合わせと、国産の天然わかめを使っているのが特徴です。ヒットの要因について工藤様は「商品のラベルをあえて簡素にしました。道の駅なので手作り感を意識したのですが、ここが評価されています」と、商品の良さに加えて、ラベルへのこだわりも強調しました。

2つ目は「宗像市鐘崎産天然ブリ大根」。地上波のテレビ番組で紹介されるなど、道の駅むなかたを全国区へと押し上げた商品です。商品開発のきっかけは、フードロス削減と漁師さんの負担軽減です。店舗で売れ残った魚は漁師さんが引き取りに来ていましたが、買い取ることでそれが不要になりました。宗像市鐘崎産天然ブリ大根は強気な値段設定となっていますが、甘く濃い目の味付けも人気となり、あれば売れるという状況になっています。

3つ目は「博多織の名刺入れ」です。県外、特に関東のお客様によく売れているとのことです。以前は食品に特化していましたが、博多織が売れたため、今後は工芸品にも注力していく方針です。

ECサイト向けに多くの商品を開発している道の駅むなかた。makeshopのデータでは、カテゴリー数が多いほど平均月商が上がる傾向にあります。その意味でも、理にかなった戦略と言えそうです。

■道の駅むなかた オンライン

第5部 競合はもう使ってるかも!? ChatGPTを活用した次世代の食品ECマーケティング戦略

第5部は、いまや社会現象にもなっている「ChatGPT」をはじめとする生成AIの活用方法について、株式会社SaaSis 取締役の甲斐慎之助様にご紹介いただきました。

株式会社SaaSisはAI関連のコンサルティングやシステム開発、そして「ChatGPTメディア」を運営しています。社内では3分の2くらいの社員が業務にChatGPTを活用しているそうです。そのChatGPTの活用について、甲斐様は「誤った情報を提示することもあります。そのため、大切なのはエビデンスがあるかどうかを聞くこと」とアドバイスしました。

ChatGPTとの会話では、冒頭で役割や対応方法などを支持するテキストの「プロンプト」の活用が重要になります。例えば、「博多弁でお願いします」とすると、ChatGPTは博多弁を使って回答します。このように役割を具体的に指定し、それによって回答を限定する手法を「プロンプトデザイン」と呼びます。プロンプトの使いこなし次第でChatGPTの精度が大きく変わることから、その手法が世界で研究されています。

すでに有名なプロンプトデザインも登場しています。甲斐様は「Few-shot Learning」「深津式プロンプトシステム」「ゴールシークプロンプト」などの代表的なプロンプトデザインについて活用方法を紹介しました。

ChatGPTは活用次第で高い能力を発揮します。そのため、人間が担ってきた仕事を奪うのではないかと、さまざまな議論が交わされています。一方、甲斐様は「AIでないとダメな仕事もでてくる」と語り、AIの活用方法を別の角度から提案しました。

第6部 やずや商品の歴史から読み解く、通販経営に必要な視点

第6部は、株式会社やずや 代表取締役社長の矢頭 徹様にご登壇いただきました。矢頭様は経営者でありながら、現場最前線でも指揮を執られており、通販で商品を売るためのさまざまなノウハウをお持ちです。本セッションでは、チラシ中心という通信販売の黎明期からマーケットリーダーであり続けている同社の強さの秘密を紹介していただきました。

通信販売がチラシ中心の時代は、1万部の配布で100通の反応があったそうです。これは現在の10倍の効果に相当し、電話やFAXが止まらないこともあったとのこと。テレビ放送の時代になるとTVコマーシャルにも取り組みましたが、問い合わせは少なかったそうです。そこで、矢頭様はチラシがメインのメディアミクスに取り組み、売上を伸ばしていきます。ところが時代が変わると、今度は消費者がチラシを見なくなります。そこで現在では、すべてのメディアを活用したフルメディア体制になっています。

こうした時代の変遷を経験し、矢頭様が強調するのは「常にテスト」です。同社は年間で380ものテスト回数をこなしているとのこと。チラシの実例として挙げたのは、販売価格のテストでした。商品価格が3,980円と3,985円のチラシを配布したところ、何回実施しても3,985円に軍配が上がったそうです。安い方が売れると思いきや、高い方が売れてしまう。同様にパッケージデザインや製品コンセプトのテストでも、まさかと思う方が支持されることがあるそうです。

これらの経験から矢頭様が得た結論は「やってみないとわからない」でした。まずは外さないクリエイティブを用意し、市場に聞いてみる。株式会社やずやでは、テストの実施が企業文化の1つとして定着しているとのことです。

ちなみに、健康食品の一番の売れ筋は習慣になりやすいものとのこと。ブームは必ず去ってしまうので、ブームを作らずに毎年売れ続けるものを提供すれば経営が安定するとのアドバイスもいただきました。

■やずや通販サイト

第7部 食品通販で「売れないモノはない!」。放送1,000回のテレビ通販で築き上げたブランディング必勝法とは?

最終セッションとなる第7部にご登壇いただいたのは、テレビ東京 マーケティング局マーケティングセンター部長の吉澤有様です。吉澤様はお取り寄せグルメ番組のプロデューサーとして、「旅とグルメで地域を元気に!」をミッションに全国を巡りたくさんの生産者を取材してその物語を伝えてきました。現在では、テレビ東京の全体の通販を束ねて成長曲線を作ることに取り組んでいます。

同社の食品通販は当初、「番組と違う」というクレームが来たり、利益を上げにくかったりといった課題を抱えていました。転機となったのは、2011年3月の東日本大震災でした。「食の安全性への意識が高まり、生産者の顔が見えることが支持されるようになります。もともと番組は、生産者に密着したドキュメンタリーでしたから、売り上げが加速していきました。生産者の思いを伝えることで売れるようになったのです」と吉澤様は当時を振り返ります。

この成功体験から、吉澤様は「食品通販をやるなら、ブランディングを意識してほしい」とアドバイスしました。そこで大切なのは「安売りしない」「価値を伝える」の2つ。ただし、モノはモノとしての価値しかないため、モノの価値だけを伝えようとすると価格競争になってしまいます。価格競争を避けるには差別化が必要になりますが、一歩抜け出すのは簡単ではありません。そこで「独自化」です。吉澤様は「独自化で必要なのは商品力以外の何か。例えば体験や物語。生産者は一人ひとり違います。小売りができるのは独自化です」とブランディングのポイントを紹介しました。

独自化の実例として挙げたのが「完熟みかんの樹オーナー制度」です。12月に完熟みかん30キロをお届けするのですが、販売するのは夏場です。商品に成長過程の物語を加えることで独自化を実現しました。13年連続で完売しているそうです。

「人間が共感できるのは“人”。モノではありません。食品も例外ではなく、作る人に共感する。店頭に並んでいるみかんでは勝者がいない。そうなっていませんか。そうなっていなければ本当の成長曲線が描けます」と吉澤様は語りかけ、セッションを終えました。

次回のmakeshop dayは東京開催です!

最後までお読みいただき、ありがとうございます! makeshop day FUKUOKA 6th anniversaryのレポート、いかがでしたか。makeshopマガジン編集部としても、多くのことを学んだセミナーでした。講師の皆様、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

次回のmakeshop dayは、東京で秋頃の開催を予定しています。詳細が決まりましたら、またmakeshopマガジンでもご案内しますので、ぜひご参加ください!