こんにちは、MakeShopマガジン編集部です。ショップオーナー様SPECIALインタビュー第 18弾、今日のインタビューは、お餅専門店「もち処 木乃幡」様です。
楽天・スイーツ部門でショップ・オブ・ザ・イヤーを受賞、順調にネットショップを運営していた中、2011年3月、東日本大震災で被災。福島第一原子力発電所より20km以内に位置する為、工場閉鎖に追い込まれます。
それから4年半後、不屈の精神で見事に復活。現在は宮城県に工場を移し、ネットショップも再開しています。
工場閉鎖から4年、復活にかけた思いとは? 株式会社木乃幡・常務取締役 木幡吉成様にお話を伺いました。

震災に遭っても会社を信頼し、ついてきてくれる従業員達を守らなくてはいけない

110318-N-SB672-598 SUKUISO, Japan (March 18, 2011) An aerial view of damage to Sukuiso, Japan, a week after a 9.0 magnitude earthquake and subsequent tsunami devastated the area. (U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Dylan McCord/Released)

Q.東日本大震災では想像を絶するご苦労があったかと思われます。
震災をきっかけに、倒産する会社、事業継続を諦めた会社が続出する中でどのような精神で会社を復活させたのでしょうか?

二点ございます。

一点目は、幼少の頃、母が生み出した商品凍天(しみてん)がヒット商品となり、それが今でも会社を支える人気商品として続いています。
この凍天(しみてん)という商品を絶対に無くしたくないという思いがありました。
二点目は、従業員です。
震災に遭っても会社を信頼し、ついてきてくれる従業員達がいます。その従業員達を守らなくてはいけないという思いがありました。
工場を福島から宮城に移した後も勤務を継続して下さる方がいます。中には、南相馬から宮城へわざわざ引越ししてきた方もいれば
福島から数百キロを越えて毎日通う方もいらっしゃいます。

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大ヒット商品の「凍天(しみてん)」
カリっとした食感とふわふわモチモチした生地の絶妙なハーモニーが人気の秘密。

Q.震災で本社工場の営業再開を断念する前は、楽天を中心にネットショップを展開されていたようですが、そもそもネットショップをやろうと思ったきっかけはなんでしたか?

1998年、インターネットが出てきた黎明期に始めました。
それまでは切り餅、凍餅(しみもち)を中心に製造卸会社として営んでいましたが、バブル崩壊後、経済状況が厳しくなり、自分達が作った商品は自分達で販売しようと実店舗展開に切り替えました。
実店舗では、作りたて、できたての凍天が人気でしたので、これを武器に通信販売を始めたところです。
実は初めは自分でCGI、perlを勉強し、自力でショッピングカートを作ってみたんです。

Q.自分でシステムを作ったのですか?

ええ、ただ自分で作ったカートは、メールフォームによる受注でした。
当然、バックヤードシステムが必要となり、独立してシステム会社を立ち上げた知り合いに楽天の受注管理システムの開発を依頼しました。
それから数年後、スイーツ部門で「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2005」を受賞させていただくまで成長しました。
実は、楽天スーパーオークションの立ち上げ期に、出店者側として三木谷社長を交えて意見を述べたりしていました。

Q.そこからどうしてメイクショップに切り替えたのですか?

2011年、東日本大震災に遭い、工場の稼働ができなかったため、
一旦通信販売はストップしました。
システム会社の知り合いのイチオシで
受注管理、商品ページ作成ができるシステムならMakeShopが良い、と
勧められた次第です。

Q.一升餅、凍天が人気と伺いました。
商品のこだわりを教えてください。

保存料、防腐剤、その他添加物は一切使用していない、という点です。
「作りたて、できたて販売」それが一番食の安全につながると考えています。
「木乃幡健康計画」というのを打ち出しまして、健康に良いものをみなさんに召し上がっていただきたいという思いがあります。
その一つに荏胡麻油があります。アルファリノレン酸で注目されている食品ですが、
荏胡麻の搾油機を導入して荏胡麻油を販売していました。

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「作りたて、できたて販売」お店で丁寧に揚げている。

Q.凍天で特許を取得されているようですが、和菓子屋で特許を取得される方は珍しいかと思いますがなぜ取ろうと思いましたか?

特許関係に詳しい専属の弁護士がいました。
凍天は独自製法で作っており、他に事例がないことから取得した次第です。

Q.お客様とのやり取りで印象に残ったエピソードはありますか?

二つございます。
一つ目は、ネットショップを再開したことで、お客様から喜びの声をいただくようになったことです。
私たちが凍天を南相馬で販売し20年以上が経ちました。20年も続けていれば、小さい頃に凍天を召し上がっていたお客様も、今では立派な成人へと成長されています。お客様の中には、ご自身の幼少期の想い出を凍天に重ね、懐かしがって買って行かれるリピーターの方もとても多くいらっしゃいました。
しかし2011年、あの震災が起きます。
南相馬の多くの方は被災し住む場所を失いました。地元に住むことを諦め、慣れ親しんだ故郷を離れてしまう方が増えました。地元に住む人はひとり、またひとりと減っていきました。
私たちも同じで、断腸の思いで南相馬での再起をいったん見送り、工場を宮城県へと移し、ネットショップ運営を再開しました。するとその噂をどこからかお聞きになったお客様がひとり、またひとりと増えていきました。
そして、「やっとネットショップで小さい頃食べていた味が食べられるようになった」
「懐かしい。故郷を思い出す」と、
幼少期の思い出と地元への想いが綴られた手紙を頂くようになり、遠く離れていても、今でも私たちの商品を懐かしみ、喜んでくれるお客様がいる、と思うと、すごく胸が熱くなりました。

もう一つは、一升餅にまつわるエピソードです。

一升餅は、満一歳を迎えた子供に「一生、まあるく、円満に」という願いを込めて、これからの人生の祈願と、一歳まで無事に成長したことを祝う行事です。祝い方は地方の風習によって様々ですが、縁起物として餅に寿の文字や子供の名前を書く「名入れサービス」がインターネット上でも普及しはじめました。
私は、いまの職に就く前に、印章職人を志していた時がありまして、それで一升餅に名前を書くサービスを自分でも始めました。
印章の世界には「画数診断」、「筆跡術」、「書き方」によってその人の運勢を上げる方法があります。せっかくお名前を書くなら、書く文字に意味を持たせたいと考え、半紙にお子様の名前を心込めて書き、一升餅と一緒に同梱し、その様子をFacebookで掲載するようにしました。

するとある日、お客様から一本の電話がありました。

そのお客様は赤ちゃんがいらっしゃるお母様でした。
赤ちゃんが生まれた時、悲しいことに医師から心臓病を宣告され、一歳を迎えることができないと言われたそうです。
「でも、もうすぐなんとか一歳を迎えることができる。そのお祝いに一升餅を注文したい」
ご両親の切なる願いが込められた注文でした。
そしてお客さまからこうお願いされました。
名前を書く時に、健康運が上がる書き方をしてほしい、と。

私は名前を書く時にお母様の願いを声に出し、思いを込めながら書き上げました。
運命には逆らえないかもしれない、でも運命を変えるつもりで書きました。

後日、お母様から泣きながらお礼の電話をいただきました。
無事に一歳のお祝いを迎えることができたと。

一升餅を作る、というのは親の想いをカタチにする仕事。
日本独特の、一生に一度きりしかない大切なお祝いです。
子供が大きくなって自分の名前がなぜついたのか聞く機会もあるでしょう。
そんな時に、一升餅をきっかけに親子の絆を深めて欲しいと思います。

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親の願いがこめられた子供の名前。一人一人心を込めて書き上げる。

Q.最後にこれからチャレンジしていきたいことを教えてください。

わたし個人は、日本の北から南までの一升餅に関する本を執筆したいと考えています。
実は執筆途中なのですが、地域ごとに一升餅の習慣が違いますので、先ほどのお客様のエピソードなどを交えながら紹介したいと思います。
ネットショップにおいては、「お客様の想いをいかにつなぐか」を意識して取り組みたいと考えています。
ぬかりない作り込み、手抜きのない仕組み、少ないお客様でも多くのお客様でも対応できる仕組みを整えていきたいです。

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一升餅にはお祝いの方法やお餅の保存方法などを記載したリーフレットを同梱。

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一筆づつ丁寧に名入れする木幡常務取締役。

 

以上です。
木乃幡様、ご協力ありがとうございました。

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